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和衣布のささやき 2

私の父は大正3年に本郷で生まれ
平成10年2月、ぼたん雪の舞う朝
広尾の都立病院で亡くなりました。
今まで『和衣布』が細々と商いを続けて来られたのも、
父から商売としての心得を学んだからだと思われます。

建設関係の小さな会社の経営者だった父が
常々云っていたことは、
「〈孫子の兵法〉を読みなさい。兵法の中には
商売を続けていくための沢山の知恵が書かれている。
〈いろはかるた〉の 負けるが勝ちや
逃げるは百計も〈孫子の兵法〉だ」と。
子供の私には馬の耳に念仏だったのですが・・・・
今まで一度も〈孫子の兵法〉を読んだことはありません。
また 武士は食わねど高楊枝 なども好きな言葉だったようで
「苦しい時にはプライドを持って耐えなさい。」と教えられ
不景気な世の中 一寸の虫も五分の魂 と思い
プライドを持って耐えていこうと思っています。


そんな父にはお取引先との接待で料亭に行くことが多く
正月には家族サービスのつもりだったのでしょう、
新橋の料亭で芸者衆を呼び母や弟や私を「接待」してくれました。
その折、子供の私におちょこをなめさせたのが今の私の酒歴の始まりです。

芸者衆が緋色に返した半襟と
黒地に美しい友禅のお引きで装い
「松の緑」だったと思いますが、
扇をかざして華やかに舞い終わった時
おしろいで白くぬられた衿元に
そっと祝儀袋をさす父の姿を男らしく
又、粋な風情と子供なりにも感じたものでした。
多忙だった父との思い出は少ないのですが
その時のことは今でも鮮明に覚えています。

そして近頃、仕入れにセリ市に出入りするようになり
その場に芸者衆が着ていた「おひき」を目にします。
「おひき」を見るたびに在りし日の父の姿を重ねて
心の中で手を合わせている私です。


~つづく~
「自由が丘 きもの 和衣布」内藤勝美



(こちらの記事は、昨年書いたものです。
一時期お休みしていましたが、これからまた書いて行きますので、
どうぞ遊びに来てくださいね)






 



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